風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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弐章/英雄/挿話弐拾玖/愚者の末路

討伐軍の別働隊は崖の上からの攻撃には十分に注意を
払いながら、澪の谷の氷河の上を露衣土城へ向かっていた。
すると、突然に崖の上の方から大小の岩の塊が、
別働隊に向かって落ちてきた。
やはり、露衣土軍は此処で仕掛けて来たのである。
このまま、降って来る岩の塊を放っておいたら、
別働隊は壊滅状態になってしまうだろう。
しかし、別働隊には四天王の一人である崩墟が居た。
崩墟が魔法で降り掛かって来る岩を全て砂へと砕いた。
別働隊の者達は砂塗れにはなったが、死者はおろか、
一人の怪我人すら、出さずに済んだ。
そして、燿炎が崖の上に向かって声を張り上げた。
「崙土だろう!隠れていないで出て来いよ!」
すると、崖の上に数人の人影が姿を現した。
燿炎はすぐさま崩墟に指示を出す。
「崩墟。頼んだ!」
崩墟は大地の魔法で人影がある部分の崖を切り崩して、
敵を氷河へ叩き落とそうとした。
そして、露衣土軍であろう人影達は切り崩された崖に
乗ったまま、氷河に激突する寸前に切り崩された崖を
砂へと砕いて、衝撃を和らげて着地しようとした。
しかし、それまで氷河であったはずの、その場所が、
氷から水に溶かされていた。
凍浬が魔法で氷河の氷を溶かしたのだ。
敵であろう人影達はそのまま、砕かれた砂諸とも、
水の中へと沈み込んだ。
そして、一人の男が水の中から頭を出した。
その瞬間に水は再び、氷河へと戻った。
凍浬が魔法で凍らせたのである。
頭を出した男は燿炎にとって、顔見知りの崙土であった。
崙土の部下達は全て氷河の中で氷漬けになっていた。
そして、燿炎が徐に頭だけになった崙土に話し掛ける。
「久しぶりだな。崙土」
「た、助けてくれ」
崙土は必死に助けを請うた。
「心配するな。久しぶりの再会なんだ。少し話をしようぜ」
燿炎は崙土の顔を覗き込むようにして言った。
「話って、何を話するんだ?」
崙土は顔を引き攣らせて言った。
「お前は今、司令官をしているんだってな」
「それが、どうかしたのか?」
「随分と出世したもんだな」
崙土はどう返答したらいいか判らずに言葉が出て来ない。
それを見て、燿炎が言葉を続ける。
「露衣土はやり方に問題はあれども、己の信念に基づいて、
戦っている。しかし、お前はどうだ?」
「どうだ?とはどういう事なんだ?」
崙土は燿炎の言う事を計りかねて訊き返した。
「お前は己の立身出世の為に、
多くの人々を踏み潰して来たよな」
「そ、それは、誤解だ」
「どう、誤解なんだ?」
「俺は露衣土様のお考えに心を打たれ、露衣土様の為に、と」
崙土がそこまで言った時、燿炎が話を断ち切る。
「まあ、いい」
「お、俺を殺すのか?」
崙土が声を震わせながら燿炎に訊く。
「殺して欲しいのか?」
燿炎が崙土に訊き返す。
「いや、助けてくれ」
「昔のよしみだ。すぐに殺しはしないさ。凍浬、頼む」
燿炎は凍浬に声を掛けた。
崙土は凍浬の魔法で、残った頭も凍らされて、
生きたまま氷河の一部となった。
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  1. 2016/03/07(月) 09:26:15|
  2. 弐章/英雄
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