風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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弐章/英雄/挿話弐拾肆/絶え間無い葛藤の中で

討伐軍が足止めを喰らう中、燿炎は一人、苦しんでいた。
反乱軍に加わったりせずに、露衣土の下で戦っていれば、
今頃はすでに、平和を手にする事も出来たのかもしれない。
いや、それは違う。
露衣土の下で戦っていたら、この星を滅ぼすまで、
戦いを終える事は出来ないのではないだろうか。
しかし、反乱軍に加わり、その反乱軍は、今は、
討伐軍にもなってはいるが、この現状にしても、
同様の結末へと向かっているようにしか思えない。 
一体、何が〔正義〕なのだろう。
露衣土も自分もどちらも〔正義〕だとは思えない。
〔平和〕とは、一体、何なんだろう。
〔平和〕を求めれば求める程、
人は争わなければならないのだろうか。
自分は〔何〕がしたいのだろうか。
自分は〔何〕を求めているのだろうか。
自分は〔何〕をすべきなのだろうか。
自分は〔何〕なんだろうか。
「何してるの?」
突然、麗羅が声を掛けて来た。
「別に何もしてないさ」
燿炎は素っ気なく応えた。
「また、炮炎の事でも考えていたんでしょう」
「うるせーよ」
燿炎は悪態をついたが、否定も肯定もしなかった。
「平和って一体、何なんでしょうね」
燿炎が考えていた事と同じ事を麗羅が呟くように言った。
燿炎は何も言えずにいた。
そして、麗羅が続けて言う。
「いつも、炮炎が言っていたわ」
「なんて言っていたんだ?」
燿炎が麗羅の言葉に食いついた。
「平和なんてものは、己の内にのみ存在するもので、
それを周りに求めてはいけないってね」
確かに、そうなのかもしれない。
しかし、今の燿炎の内に平和の存在は感じられなかった。
そして、過去を振り返ってみても、
平和を感じた覚えは一度も無かった。
覚えていないくらい子供の頃には、平和であったのかも
しれないが、それでも、世界の何処かで、子供には
知り得る事の無い紛争が、起こってはいたのであろう。
果たして、この世界に、平和なんてものは、
存在するのだろうか。
燿炎がそんな風に想いを巡らせた、
ちょうどその時に、麗羅が話掛けてくる。
「炮炎と一緒だった時は平和だったわ」
「どう?平和だったんだ?」
燿炎が麗羅に訊いた。
「でも、平和じゃなかったの」
燿炎の質問に対する回答としては不適切に感じたので、
燿炎は黙って、麗羅の次の言葉を待つ。
「だから、戦う事を決めたのよ」
結局、質問に対する納得のいく回答は得られなかった。
しかし、戦う事の意味については、
なんとなくだが、解るような気がした。
再び、麗羅が続けて言う。
「露衣土は己の平和を、
全ての人々に押し付けようとしているの」
燿炎は何も言わずにただ、麗羅の話を聞いている。
「だから、露衣土だけは倒さなければならないのよ」
確かに、麗羅の言う通りだと思った。
そして、燿炎は自分が平和を求め過ぎていた事に気付いた。
反乱軍のリーダーとなり、その責任感もあっての事だろう。
自分達が平和にしなければならない、と。
今までは、平和の為にと戦っていたのだ。
しかし、この戦いはそのようなものではなかったのだ。
平和への希望を繋ぐ為の戦いであったのだ。
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  1. 2016/03/07(月) 09:20:22|
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