風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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弐章/英雄/挿話参/偽善と現実の間で

炎の大陸、元、灼の国にある、烈の河の辺にある小さな村。
先の統一戦争により、以前此処で暮らしていた者達は、
兵士として駆り出され、その生死に関しては不明だが、
その後、此処で暮らす者はいなくなっていた。
しかし、三日程前に、
とある十数人の者達がやって来て、寝食を共にしていた。
この村は周囲の殆どを熱帯雨林に囲まれており、
唯一視界が開けているのは、烈という大河の方だけである。
そして、一人の男が一本の木に背を預け、
その大河の方を厳しい眼差しで眺めていた。
そこへ一人の女が駆け寄って来る。
「何を考えているの?」
女が男に声を掛けた。
「何も考えてなんかいないさ」
男が素っ気なく応える。
「燿炎ってつまらない男ね」
「悪かったな」
「どうせ炮炎の事でも考えていたんでしょう」
「言うな、麗羅」
燿炎は厳しい表情で言った。
と、そこへまた一人男が駆け寄って来る。
「来ました」
「映してくれ」
燿炎が応える。
すると、突然中空に画面のようなものが現れた。
そこには一人の男が映し出されていた。
そして、必死に何かを訴えているようだった。
それを聞き付けてか、周りに人が集まって来る。
画面に映し出された男が何を言っているのか、それは。
『長い長い戦乱の日々を乗り越え、
多くの犠牲の下、やっと手に入れた平和。
それを何故、再び戦乱の日々へと戻そうとするのか。
反乱軍の者達へ告ぐ、どうかこれ以上、
新たな哀しみや憎しみを作り出す事は止めて欲しい』
それを聞き、周りの者達が騒ぎ出す。
「何、勝手な事言ってやがるんだ!」
「新たな哀しみや憎しみを作り出してるのは、
そっちじゃねぇか!」
「過去はともかく、今も尚、続くこの非道の数々。
解っているのか!?露衣土よ!!」
そんな中、燿炎は黙ったまま、
厳しい表情で画面を睨んでいた。
「燿炎も何か言ったら?」
麗羅が声を掛けて来た。
「いや、俺には言う資格はねぇよ」
「馬っ鹿じゃないの!まだそんな事言ってるなんてさ」
「うるせぇ!」
「何の為に炮炎が犠牲になったと思ってるのよ!」
「それは言うな!」
燿炎は叫んでいた。
周りの者達は騒ぐのを止め、
その場から思い思いに立ち去って行った。
今、この場にいるのは、燿炎、麗羅、
そして、画面を映し出したと思われる男。
数瞬の沈黙が三人を包み込む。
「風電、もういい。ありがとな」
燿炎が画面を映し出していた風電に声を掛けた。
「では、失礼します」
そう言って、風電もこの場から立ち去って行く。
もう中空の画面は消え去っていた。
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  1. 2016/03/05(土) 06:20:20|
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