風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

壱章/人斬り/挿話弐拾参/甘い男と不安を拭えなかった男

静寂に包まれた闇の中で、
二人の男が対峙していた。
一人は黒谷天竜。
もう一人は隠岐虎太郎であった。
そして、先にその静寂を切り裂いたのは、
虎太郎だった。
「先手必勝!」
叫びながら天竜へと斬り掛かって行った。
天竜はなんなく虎太郎の剣を受ける。
虎太郎は次々と剣を振って来る。
天竜は防戦一方である。
「どうした!?天竜?」
虎太郎が天竜に声を掛けた。
「どうもしねぇよ。楽しいねぇ」
天竜が虎太郎の剣を受けながら応えた。
その表情にはうっすらと、
笑みが浮かんでいるようにも見えた。
「そうか。では、これでも楽しんでいられるかな」
虎太郎の剣がいっそう激しさを増した。
天竜は余裕を持って、
虎太郎の剣を受けているように見えた。
が、その時、一瞬天竜が体勢を崩した。
天竜はすぐさま体勢を立て直したが、
「隙あり!」
の掛け声と共に虎太郎の剣が、
天竜の喉元へと伸びて来ていた。
天竜は必死に左後方へと体を逃したが、
虎太郎の剣は信じられない速さで、
天竜を追って来る。
今度は右後方へと体を逃した。
しかし、幾らもしないうちに、
壁にぶち当たってしまった。
虎太郎の剣はすぐそこまで迫って来ていた。
「むぅ」
天竜が呻く。
途端、再び闇は静寂に包まれた。
虎太郎の剣は天竜の喉の皮を一枚程切り裂いて、
止まっていた。
二人はその体勢のまま微動だにしないでいた。
数瞬の静寂を破り虎太郎が天竜に声を掛ける。
「どうやら私の勝ちのようだな」
すると天竜は、
「甘いな」
と呟くように言いながら、
目の前の虎太郎の胴体を真っ二つにした。
虎太郎の下半身は意思を失い倒れ込み、
上半身は床に投げ出された。
床には血溜まりが拡がっていく。
「卑怯者、」
虎太郎は最後にそう言い残して、
口から血の泡を吹きながら絶命した。
天竜は外に出て、徐に自らの腕を切った。
切ったと言っても切り落としたわけではない。
天竜はいつも人を斬った後に、
こうして自傷をするのであった。
そして、体中にある自傷による傷は、
すでに百五十を超えていた。
いつもなら自傷をする事で、
人を斬った事による興奮のようなものが、
抑えられていたのだが、
今日は何かがおかしかった。
何故だか腹立たしい自分がいるのである。
理由は天竜なりには理解は出来ている。
隠岐流の必殺剣を見切る事が出来なかったから。
天竜はそう理解するしかなかった。
虎太郎との闘いは、決して本気ではなかった。
いや、本気ではあったが、
隠岐流の必殺剣を出させる為に、
わざと受けに回ったのである。
しかし、それでも尚、隠岐流の必殺剣は、
見切る事が出来なかった。
天竜は虎士郎に対して、
負ける気はしていなかったが、
斬れる自信も無かったのである。
「くそっ!」
天竜は一人、闇の中で、
内なる闇に向かって吠えた。
スポンサーサイト
  1. 2016/03/04(金) 05:27:42|
  2. 壱章/人斬り
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<壱章/人斬り/挿話弐拾肆/命尽きようとしている女 | ホーム | 壱章/人斬り/挿話弐拾弐/闇の中の男達>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://gushax2.blog.fc2.com/tb.php/25-d53158da
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

菊千代

Author:菊千代
きくちよと申します。

最新記事

カテゴリ

詞/ことば (1)
序章/闇の中で (1)
壱章/人斬り (27)
間章/在 (1)
弐章/英雄 (35)
間章/無 (1)
参章/死望者 (4)
終章/光の彼方へ (1)
後書き (1)
お知らせ (1)

月別アーカイブ

最新コメント

検索フォーム

RSSリンクの表示

ご協力サイト様


リンク

このブログをリンクに追加する

ホームページ

Tails exit the Base

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。