風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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壱章/人斬り/挿話拾捌/相変わらずな男

「土産だぜ」
天竜は部屋に入ってくるなり、
近藤に向かって酒徳利を一つ放り投げた。
そして、続けざまに言う。
「そろそろ無くなる頃だろうと思ってよ」
天竜はまだ他にも酒徳利を三つ程持っていて、
その一つを徳利のまま口に運んだ。
「珍しく気が利くじゃねぇかよ」
近藤が天竜に嫌味っぽく言った。
「珍しいってのは余計なんじゃねぇのかい」
そう言いながら天竜は左前方に近藤を、
右前方に土方を向かえる形で胡座をかいて座った。
「いきなりなんだがよぅ。なんとかなんねぇか!?」
近藤が天竜に向かって言った。
「例の件か、」
「ああ、」
「その件は虎三郎に任せてあるぜ」
「虎三郎で大丈夫なのか!?」
土方が話に割って入ってくる。
「恐らくは、無理だろうな」
「なに!?じゃあ虎三郎を見殺しにする気なのか!?」
「そうなるかもしれねぇな」
近藤は二人のやり取りをじっと見ている。
土方は天竜の言葉を待った。
「いや、よぅ、奴を俺が斬るわけには
いかねぇんじゃないかと思ってんだけどよ」
「虎次郎の敵だからか!?」
「それもあるけどよぅ、
自分とこの隊長さんまでやられてんだろ」
「斉藤か、」
「さらには源太郎の奴も恐らく、」
「それは本当なのか!?」
「源太郎を斬れる奴なんか、
そうそういねぇだろうからな」
「それもそうだな、」
「可能性は高いと思うぜ」
「で、よう、さっき[恐らく]と言ったけどよぅ、
少しでも勝算があっての事なのか!?」
近藤が天竜に訊いた。
「勝算と言えるかどうかはわからねぇが、
隠岐流には必殺剣があると聞く」
「私も聞いた事があるな」
土方が同調する。
「だから、ひょっとしたら、とは思うんだけどな」
「なるほどな」
そう言いながら近藤が杯を口に運んだ。
「とにかくよぅ、先ず虎三郎にやらせねぇと、
俺が動くわけにはいかねぇと思ってよ」
天竜が言う。
「よし。わかった。
その件は取り敢えず虎三郎に任せるしかねぇな」
近藤が言う。
「そのようですね」
土方が言う。
「で、一の後釜は決まったのかい?」
天竜がどちらともなく訊いた。
「ああ、それも虎三郎でいいかと思っているんだが、
どうだ?」
近藤が天竜に訊き返した。
「いいんじゃねぇの、虎三郎で」
「しかし、」
土方が口を挟む。
「なんだ!?歳、」
近藤が土方に声をかける。
「いや、天竜の話を聞く限りじゃ、虎三郎もこれから、
どうなるかわからないじゃないですか」
「ああ、そりゃあ、そうなった時にまた考りゃいい」
近藤がきっぱりと言う。
「そうだぜ。
それにお前等もいずれは俺に斬られるんだからな」
不敵な笑みを浮かべながら天竜が言い放った。
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  1. 2016/03/03(木) 06:47:31|
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