風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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壱章/人斬り/挿話拾陸/過信する男

闇夜の中、虎士郎は三人の男達と対峙していた。
「虎士郎じゃないのか!?」
三人の内、真ん中に居た男が声をかけた。
どうやらこの男は虎士郎と顔見知りのようである。
しかし虎士郎は何も応えず、
剣を構え三人を睨んでいる。
「斉藤さん、ひょっとして、」
斉藤と呼ばれた男の右側に居る男が言った。
「ああ、」
斉藤が短く応える。
「と、いう事は、虎次郎を斬ったのも、」
斉藤の左側に居る男が言った。
「そうだろうな」
斉藤が応える。
途端に斉藤以外の二人の男達は、
剣を抜き虎士郎に向かって構えた。
「ふふふ、」
斉藤が視線を下に落とし少し笑った。
「どうかしたのですか?」
右側の男が虎士郎に視線を止めたまま斉藤に訊いた。
「いや、まさか、虎次郎を斬った奴が身内だったとは」
斉藤は苦笑いをした。
「盲点でしたね」
左側の男が言った。
虎士郎は微動だにせず三人を睨んでいた。
「とりあえず、
このまま見過ごすわけにもいかねぇだろうよ」
「はい」
「そうですね」
「二人で掛かればなんとかなんべぇ。
中島と葛山に任せるぜ」
「はい」
中島と葛山は声を揃えて応えた。
そして二人は左右に拡がりながら、
虎士郎との間合いを詰めていった。
虎士郎は二人には目もくれず斉藤を睨みつけていた。
中島と葛山は目で合図をして、
同時に虎士郎へと斬り掛かって行った。
虎士郎はなんなく二人の剣をかわし、
自らの剣を一閃した。
中島と葛山はもつれるように、
虎士郎の背後で倒れ込んだ。
二人共に腹を深く斬られていた。
二人共、まだ息はあるが、
死ぬのはもう時間の問題である。
「ほほう、」
それを見ていた斉藤が、
ちょっとの驚きの表情を見せていた。
虎士郎は斉藤の目の前で剣を構え、
斉藤を睨みつけている。
「どうやら隠岐家の恥晒しとは見当違いだったようだな」
そう言いながら斉藤はゆっくりと剣を抜き構えた。
中島と葛山はもう息絶えていた。
数瞬の静寂が二人を包み込む。
その静寂を破り、虎士郎が先に動いた。
途端に斉藤も虎士郎に向かって動いた。
一気に間合いが詰まる。
斉藤は虎士郎の剣を受け流し、
虎士郎に向かって剣を振った。
しかし虎士郎も斉藤の剣を紙一重でかわし、
体を入れ替えた形で再び向き合った。
「なるほどな。
これじゃあ中島と葛山には荷が重かったようだな」
虎士郎は相変わらずに無言で斉藤を睨んでいる。
「今度はこちらから行かせてもらうぜ」
斉藤が虎士郎に斬り掛かる。
虎士郎は避ける事をせずに剣で受けた。
数度の剣の鎬合いの後、
急に虎士郎が斉藤の剣を素早く避ける。
斉藤が少し体勢を崩しす。
斉藤はすぐさま体勢を立て直したが、
その時には虎士郎の剣が、
斉藤の喉元へと伸びて来ていた。
斉藤は右後方へと飛び退いたが、
虎士郎の剣の方が速く斉藤を追いかける。
斉藤は目を見開いたまま喉元を、
虎士郎の剣に貫かれていた。
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  1. 2016/03/03(木) 06:43:20|
  2. 壱章/人斬り
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