風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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壱章/人斬り/挿話拾弐/彷徨える男

数刻前に日は落ちて、辺りは闇につつまれていた。
そんな中、隠岐虎三郎は、
何かを求めるように京都の町中を彷徨っていた。
先日の天竜が常宿している旅籠の一室での事である。
「一体、誰なんですか?」
「誰かどうかはともかくよ、」
「はい」
「そいつは夜な夜な人斬りに、
京の町をふらついてるようだぜ」
「そうなんですか?」
「恐らく、此処しばらくの京の町における人斬りの大半は、
奴が絡んでいると俺は考えている」
「はい」
「もちろん、倒幕派の連中の仕業も、
何件かは考えられるが、」
「はい」
「斬られた奴等の大半は倒幕派の連中だろ」
「そうですね」
「ちょっと考えたんだがよ、」
「はい」
「奴は誰彼構わずに出くわした相手を斬る、」
「なるほど」
「そして、恐らく、
源太郎の件も奴の仕業なんじゃねぇのかな」
「えっ!?」
「これは憶測にしか過ぎねぇけどよ、」
「はい」
「源太郎を斬れる奴なんか、そうはいねぇだろうからな」
「はい」
「とにかくよ、虎次郎と同じ様に、よ、」
「はい」
「夜出歩いていりゃあ、そのうち、出くわすだろうよ」
このような天竜の話を聞き、
虎三郎は虎次郎の敵を討つべく、
毎夜のようにこうして京都の町中を、
一人で彷徨っているのである。
さらにそいつは虎三郎達の父親であった、
源太郎の敵でもあるのかもしれない。
そう考えると、自分がなんとしてでも、
敵を取らなければならない、と、
強い気持ちを抱かずにはいられなかった。
虎次郎を斬った奴は、決して他の誰にも、
斬らせるわけにはいかなかった。
だから、一人なのである。
本来、新撰組では単独行動は禁じられている。
その禁を破ってでも、なのである。
新撰組は新撰組で、そんな隠岐家の事情を、
理解するような形で静観していた。
たとえ咎めなければならなくなったとしても、
全ての片がついてからでいいという意味で、
今すぐ口出す必要はなかったのである。
そして、虎三郎が兄の敵を探し、
夜な夜な京都の町を彷徨い始めて、
一週間は過ぎたのだが、
不審な人物に遭遇する事もなく、
それどころか誰とも出会う事すらなかった。
そして、今日もまた、
何事もなく過ぎていこうとした矢先、
一人の不審な男が、虎三郎の視線の先に捉えられた。
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  1. 2016/03/03(木) 06:36:11|
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