風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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弐章/英雄/挿話参拾参/万事休す

露衣土の部屋の前で燿炎は露衣土と対峙していた。
珍しく風もまったく吹いていない。
風も二人の対決を固唾を呑んで、静かに見守っている。
正に、そんな感じであった。
そんな中で先に動いたのは燿炎だった。
燿炎は自らの頭上に、とてつもなく大きな火球を作り、
その火球を露衣土へ向けて放つ。
これだけの火球を作り出せるのは、
この星でも燿炎にしか出来ない事だろう。
それでも露衣土は微動だにせず、そのまま火球に包まれた。
普通ならこれで露衣土の体は跡形も無く燃え尽くされ、
勝負は決するはずであった。
しかし、信じられない事に、
その火球の中から、笑い声が響いてくる。
そして、露衣土が言う。
「これくらいの炎で私を倒せるものか」
途端に露衣土を包んでいた火球が一気に消し飛んだ。
露衣土は先程と同じ状態で微動だにせず立っていた。
「くっ、」
燿炎は小さく呻いた。
燿炎にはもう、先程より強力な炎は作り出せない。
燿炎が作り出す事が出来る最大の炎が通用しなかったのだ。
万事休すである。
「どうやら、覚悟が必要なのはお前の方だったようだな」
露衣土が勝ち誇ったように言った。
燿炎は何も言い返せずに、ただ露衣土を睨みつける。
そして、露衣土は畳み掛けるように言う。
「炮炎があの世で寂しがっているぞ。
これから炮炎と再会させてやろう」
露衣土のその言葉と共に、
燿炎は一瞬にして凍らされてしまった。
露衣土からすれば、後は大地の魔法で、
燿炎を粉々にするだけである。
  1. 2016/03/08(火) 05:56:59|
  2. 弐章/英雄
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弐章/英雄/挿話参拾弐/理解を超えた対立

様々な経緯を経て、結果的に、なのかもしれないが、
燿炎は露衣土に対する理解を深める事となった。
だから、燿炎は憎しみを抱いていたはずの露衣土に対して、
尊敬の念すら抱くようになってきていた。
そして、露衣土に対する尊敬の念があるからこそ、
燿炎もまた、真剣に平和へと向かわなければならない。
炮炎も真剣に平和へと向かった過程で、露衣土に
殺されたのであり、露衣土もそんな炮炎だからこそ、
真剣に炮炎を殺したのである。
そして、燿炎と露衣土は、
これから雌雄を決しようとしている。
お互いがお互いの信ずるものの為に、
相手を倒さなければならない。
その結果、恐らくはどちらかが死ぬ事になるであろう。
そして、どちらが死ぬ事になったとしても、
どちらも恨んだり、憎んだりするものではないのだ。
お互いが真剣に平和というものと向き合った結果、
相手を殺さなければならなくなっただけの事である。
二人は数瞬の間、目を合わせたまま微動だにしなかった。
そして、露衣土が先に燿炎に声を掛ける。
「久しぶりだな」
「そうだな。これだけの時間があれば、
お前も十分に覚悟が出来ただろう?」
燿炎は露衣土の声に応えると共にそう切り返した。
「私に一体、何の覚悟の必要があるんだ?」
露衣土も負けずに切り返した。
「まあ、いい。俺達の間に言葉はもう、不要だ」
「そうだな」
二人は再び、目を合わせたまま微動だにしなくなった。
下階では、城兵と討伐軍との激しい戦闘が続いている。
しかし、此処はまるで、
時が止まってしまったかのようである。
  1. 2016/03/08(火) 05:55:24|
  2. 弐章/英雄
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弐章/英雄/挿話参拾壱/憎しみが理解へ変わるまで

久しぶりに露衣土の顔を見ると、燿炎の頭の中で、
炮炎が殺された場面が繰り返された。
いつも、夢で見ていた場面である。
燿炎の中で何とも言えないような感情が、
沸々と湧き上がってくる。
兄の炮炎を失った哀しみ。
その炮炎を殺した露衣土を目前にし、
憎しみが生じてきても当然ではある。
しかし、以前は憎しみもあったが、今のこの感情には、
不思議と憎しみのようなものは、もう無かった。
だから、何とも言えないようなものなのだ。
今、燿炎も露衣土もお互いに対して憎しみを抱いて、
敵対しているわけではなかった。
露衣土は精霊の星を統一する事が平和へと繋がると信じて、
その妨げになる者は炮炎であろうとも、燿炎であろうとも、
他の誰であろうとも排除するだけの事で、その結果として、
炮炎を殺す事になり、燿炎とも敵対する事に
なってしまっただけなのだ。
今の燿炎には、そんな露衣土の姿勢が
十分に理解出来るようになっていた。
勿論、幼馴染みという事もあり、長年共に過ごしてきた、
露衣土の性格は十分に解ってはいた。
しかし、炮炎が殺された時は、露衣土に対して、
憎しみを抱かずにはいられなかった。
その憎しみが露衣土に対しての疑問というものを
決定的なものにし、露衣土の下を離れて、
反乱軍へと身を投ずる最大の要因になった。
そして、反乱軍のリーダーとなり、露衣土軍と
戦っていくうちに、平和というものに対する疑問、
戦う事に対する疑問、様々な疑問と向き合う事となり、
それら多くの疑問が燿炎の内にあった露衣土に対しての
憎しみを洗い流してしまったのかもしれなかった。
そして、何の迷いも無く、いや、迷いはあったとしても、
それを表には出さずに、自分が信じた道を突き進む事が
出来る露衣土に対して尊敬の念すら抱くようになっていた。
露衣土は露衣土で真剣に平和へと向かっていたのだ。
今の燿炎には、それが十分過ぎる程、
理解出来るようになっていた。
  1. 2016/03/08(火) 05:53:58|
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弐章/英雄/挿話参拾/時を隔てた再会

燿炎達、討伐軍の別働隊は崙土達を倒すと、
後は何事も無く、露衣土城へと辿り着いた。
恐らくは、もう、強力な敵は残っていないのであろう。
露衣土軍の本隊は湘の国で展開し、
討伐軍の本隊と睨み合いを続けている。
そして、先日、司令官の崙土も倒したのだ。
燿炎達、討伐軍はそのまま露衣土城へ突撃して行った。
露衣土城の中へはすんなりと入る事が出来た。
しかし、城の中に入った途端、
残っている城兵達の襲撃を受けた。
それ等、城兵達は他の者達に任せ、
燿炎は一人、露衣土の下へ向かった。
燿炎にとってはかつて知ったる露衣土城である。
懐かしくも感じたが、
今は感慨に耽っているわけにもいかない。
それよりもやけに簡単に進む事が出来る。
露衣土の下へ向かう燿炎を阻む者がいないのだ。
燿炎は感じ取った。
〈これは罠だと〉
〈一騎討ちをする為だと〉
例え罠だとしても、燿炎は戦うしかない。
燿炎達にとっても露衣土と燿炎の
一騎討ちを狙っていたのである。
此処へ来て、露衣土と燿炎達の思惑が一致したのだ。
露衣土にとっても予定通りであり、
燿炎にとっても予定通りなのである。
もう少しで城の屋上へと辿り着く。
屋上の広場の先に露衣土の部屋がある。
そこで炮炎が殺されたのだ。
それも燿炎の目前で殺されたのだ。
燿炎は屋上へと出た。
燿炎が露衣土の部屋の方へ体を向けると、
露衣土が自室の前で待ち構えていた。
燿炎は露衣土の表情がはっきりと判る位置まで近づき、
足を止めて露衣土と向き合った。
本当に久しぶりの対面である。
かつて燿炎は、この露衣土と共に、
精霊の星を統一するべく戦っていたのだ。
それより以前は、炮炎も含め、
幼少時代を共に過ごしてきた幼馴染みでもあった。
そして、燿炎にとって実の兄でもあった炮炎は、
この先にある露衣土の部屋で露衣土に殺されたのだ。
その後に、燿炎は露衣土の下を離れ、
反乱軍に身を投じる事となった。
それから、二人は直接対面する事はなかった。
そして、十数年の時を隔てて二人は今、再び対面している。
今度はお互いがお互いの敵となって、である。
  1. 2016/03/07(月) 09:28:10|
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弐章/英雄/挿話弐拾玖/愚者の末路

討伐軍の別働隊は崖の上からの攻撃には十分に注意を
払いながら、澪の谷の氷河の上を露衣土城へ向かっていた。
すると、突然に崖の上の方から大小の岩の塊が、
別働隊に向かって落ちてきた。
やはり、露衣土軍は此処で仕掛けて来たのである。
このまま、降って来る岩の塊を放っておいたら、
別働隊は壊滅状態になってしまうだろう。
しかし、別働隊には四天王の一人である崩墟が居た。
崩墟が魔法で降り掛かって来る岩を全て砂へと砕いた。
別働隊の者達は砂塗れにはなったが、死者はおろか、
一人の怪我人すら、出さずに済んだ。
そして、燿炎が崖の上に向かって声を張り上げた。
「崙土だろう!隠れていないで出て来いよ!」
すると、崖の上に数人の人影が姿を現した。
燿炎はすぐさま崩墟に指示を出す。
「崩墟。頼んだ!」
崩墟は大地の魔法で人影がある部分の崖を切り崩して、
敵を氷河へ叩き落とそうとした。
そして、露衣土軍であろう人影達は切り崩された崖に
乗ったまま、氷河に激突する寸前に切り崩された崖を
砂へと砕いて、衝撃を和らげて着地しようとした。
しかし、それまで氷河であったはずの、その場所が、
氷から水に溶かされていた。
凍浬が魔法で氷河の氷を溶かしたのだ。
敵であろう人影達はそのまま、砕かれた砂諸とも、
水の中へと沈み込んだ。
そして、一人の男が水の中から頭を出した。
その瞬間に水は再び、氷河へと戻った。
凍浬が魔法で凍らせたのである。
頭を出した男は燿炎にとって、顔見知りの崙土であった。
崙土の部下達は全て氷河の中で氷漬けになっていた。
そして、燿炎が徐に頭だけになった崙土に話し掛ける。
「久しぶりだな。崙土」
「た、助けてくれ」
崙土は必死に助けを請うた。
「心配するな。久しぶりの再会なんだ。少し話をしようぜ」
燿炎は崙土の顔を覗き込むようにして言った。
「話って、何を話するんだ?」
崙土は顔を引き攣らせて言った。
「お前は今、司令官をしているんだってな」
「それが、どうかしたのか?」
「随分と出世したもんだな」
崙土はどう返答したらいいか判らずに言葉が出て来ない。
それを見て、燿炎が言葉を続ける。
「露衣土はやり方に問題はあれども、己の信念に基づいて、
戦っている。しかし、お前はどうだ?」
「どうだ?とはどういう事なんだ?」
崙土は燿炎の言う事を計りかねて訊き返した。
「お前は己の立身出世の為に、
多くの人々を踏み潰して来たよな」
「そ、それは、誤解だ」
「どう、誤解なんだ?」
「俺は露衣土様のお考えに心を打たれ、露衣土様の為に、と」
崙土がそこまで言った時、燿炎が話を断ち切る。
「まあ、いい」
「お、俺を殺すのか?」
崙土が声を震わせながら燿炎に訊く。
「殺して欲しいのか?」
燿炎が崙土に訊き返す。
「いや、助けてくれ」
「昔のよしみだ。すぐに殺しはしないさ。凍浬、頼む」
燿炎は凍浬に声を掛けた。
崙土は凍浬の魔法で、残った頭も凍らされて、
生きたまま氷河の一部となった。
  1. 2016/03/07(月) 09:26:15|
  2. 弐章/英雄
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弐章/英雄/挿話弐拾捌/急がば回れ

少数精鋭の別働隊で露衣土城を急襲する事にした討伐軍。
その別働隊にはリーダーである燿炎を含め、
凍浬、麗羅、崩墟らの四天王が揃って組み込まれていた。
本隊の方は露衣土軍と睨み合いをするだけだからだ。
戦況から考えて、露衣土軍の方から攻めて来る事は、
先ず、ないと言っていいであろう。
万が一、露衣土軍の方から攻めて来られたとしても、
数の力で負ける事は考え難い。
今や、形勢は圧倒的に討伐軍の方に傾いているのである。
だから、別働隊を組まずに本隊のまま、進軍して行き、
露衣土城を攻め落とす事も可能であった。
むしろ、露衣土城を攻め落とすには、
そちらの方が確実ではあった。
しかし、それでは、露衣土帝国がやってきた事と
なんら変わりがなくなってしまう。
そして、双方の軍、更に民間人も含め、
悪戯に犠牲者を増やすだけなのだ。
それを避ける為に、少数精鋭の別働隊を組んで、
露衣土城のみを攻め落とそうとしているのである。
そして、燿炎達、別働隊の一行は、
この澪の谷を露衣土城へと向かって進んでいた。
澪の谷の底には氷河が流れていた。
討伐軍はその氷河の上を進んでいる。
両脇は切り立った崖である。
このような所で軍隊を展開する事は出来ない。
別働隊も縦長になって、進軍するだけだった。
もし、此処で露衣土軍が仕掛けて来るのであれば、
崖の上からの攻撃しか考えられないのだ。
  1. 2016/03/07(月) 09:25:13|
  2. 弐章/英雄
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弐章/英雄/挿話弐拾漆/定まった標的

燿炎達、討伐軍は本隊を洲の国で展開し、
それとは別に少数精鋭の別働隊を組んで、
こちらの澪の谷を進み、露衣土城へと向かっていた。
澪の谷で大部隊を展開する事は出来ない。
露衣土軍の本隊も洲の国との国境を挟んで、湘の国で
部隊を展開し、討伐軍本隊と睨み合いを続けていた。
三日前の作戦会議で燿炎が本隊を洲の国で展開したまま、
少数の別働隊で露衣土城を攻め落とす作戦を提案した。
幹部達の多くは、そのような燿炎の提案に対し、
戸惑いを隠せなかった。
「少数部隊で露衣土城を攻め落とせるのだろうか」
「いや、その前に露衣土城に辿り着く事さえ難しいだろう」
このような否定的な意見が会議場を飛び交っていた。
そんな中で、凍浬が燿炎に声を掛ける。
「やっと本気になったんだな」
そして、燿炎は皆に語り掛ける。
「澪の谷を通って行けば、露衣土城に辿り着く事は、
そう難しい事ではない。が、少数部隊で
露衣土城を攻め落とす事は、そう容易くもない。
しかし、我々はそれをやり遂げねばならない」
そして、戸惑う幹部達に、これまで見せた事のない程の
強い決意を込めた表情を見せる。
それを見て、それまで戸惑っていた幹部達も、
氷の大陸出身で地理を熟知している燿炎の提案に納得し、
また、燿炎の強い決意の込められた表情に、
それまで抱いていた不安も払拭され、全会一致で
燿炎の提案した作戦を決行する事になったのである。
  1. 2016/03/07(月) 09:24:07|
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弐章/英雄/挿話弐拾陸/功を焦る司令官

氷の大陸、露衣土城。
露衣土はいつものように自室に篭って、
窓から外を眺めていた。
そこへ、一人の男が入って来た。
「失礼致します」
しかし、その男はいつもの報告係の男ではなかった。
「何用だ?崙土。司令官のお前が此処に来るとは」
露衣土は崙土に声を掛けた。
「燿炎達、反乱軍の一部が澪の谷へ迂回して、
直接こちらに向かっているようですが」
直ぐに崙土が応えた。
「判っておる」
露衣土は淡々としている。
「如何致しましょうか?」
崙土が露衣土の顔色を伺うかのように訊いた。
「放っておけばいい」
素っ気なく露衣土が応えた。
「と、申しますと!?」
「此処へ来るというのであれば、
迎えてやればいいという事だ」
「宜しいのですか?」
「構わん。燿炎には私が直接手を下せばいい」
露衣土がキッパリと言い切った。
「しかし、露衣土様の手を煩わせる事もありますまい」
露衣土は厳しい表情で黙していた。
続けて崙土が言う。
「私が澪の谷へ出向いて、燿炎達を片付けて来ましょう」
「好きにしろ」
露衣土は相変わらずに淡々としたままだ。
「では、早速に」
そう言って、崙土は露衣土の部屋を後にした。
再び、自室で一人になった露衣土は、
窓から外を眺め、厳しい表情で独り呟く。
「馬鹿め。何もそう、死に急ぐ事もないだろうに。
今の燿炎を倒せるとすれば、私しかおらん。
私が燿炎を倒す、或いは私が倒されるか、だ」
  1. 2016/03/07(月) 09:23:14|
  2. 弐章/英雄
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弐章/英雄/挿話弐拾伍/再び動きだそうとする世界

ひょんな事から、燿炎の迷いは晴れていた。
露衣土を倒したところで平和になるとは限らない。
しかし、露衣土を倒さない限り、
平和への希望が絶たれてしまうのだ。
だから、平和への希望を絶やさない為にも、
露衣土だけは倒さなければならない。
そして、露衣土を倒した後、平和になるかどうかは、この
世界全体の問題であり、討伐軍という一勢力、ましてや、
燿炎という個人一人でどうにか出来るものではない。
そして、平和の為にと戦っている限りは、
露衣土と同様な事をする事になるだろう。
燿炎は己の愚かさを思い知る。
「麗羅」
燿炎が麗羅を呼んだ。
「何?」
麗羅が応えた。
「ありがとう」
燿炎が麗羅に礼を言った。
「急に変な事、言わないでよ」
麗羅は何で礼を言われるのか解らずに戸惑いながら言った。
それには構わずに燿炎は麗羅に頼む。
「皆を集めてくれないか」
「解ったわ」
麗羅はそう言うと、その場を離れた。
一人残った燿炎は、再び考え込んだ。
そして、数瞬の後、露衣土城の方角を見上げながら呟く。
「露衣土よ、待っていろよ。お前は俺が倒す」
燿炎の表情には固い決意が込められているようだった。
そして、燿炎は皆が集まる会議場へと歩を進めて行った。
  1. 2016/03/07(月) 09:22:08|
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弐章/英雄/挿話弐拾肆/絶え間無い葛藤の中で

討伐軍が足止めを喰らう中、燿炎は一人、苦しんでいた。
反乱軍に加わったりせずに、露衣土の下で戦っていれば、
今頃はすでに、平和を手にする事も出来たのかもしれない。
いや、それは違う。
露衣土の下で戦っていたら、この星を滅ぼすまで、
戦いを終える事は出来ないのではないだろうか。
しかし、反乱軍に加わり、その反乱軍は、今は、
討伐軍にもなってはいるが、この現状にしても、
同様の結末へと向かっているようにしか思えない。 
一体、何が〔正義〕なのだろう。
露衣土も自分もどちらも〔正義〕だとは思えない。
〔平和〕とは、一体、何なんだろう。
〔平和〕を求めれば求める程、
人は争わなければならないのだろうか。
自分は〔何〕がしたいのだろうか。
自分は〔何〕を求めているのだろうか。
自分は〔何〕をすべきなのだろうか。
自分は〔何〕なんだろうか。
「何してるの?」
突然、麗羅が声を掛けて来た。
「別に何もしてないさ」
燿炎は素っ気なく応えた。
「また、炮炎の事でも考えていたんでしょう」
「うるせーよ」
燿炎は悪態をついたが、否定も肯定もしなかった。
「平和って一体、何なんでしょうね」
燿炎が考えていた事と同じ事を麗羅が呟くように言った。
燿炎は何も言えずにいた。
そして、麗羅が続けて言う。
「いつも、炮炎が言っていたわ」
「なんて言っていたんだ?」
燿炎が麗羅の言葉に食いついた。
「平和なんてものは、己の内にのみ存在するもので、
それを周りに求めてはいけないってね」
確かに、そうなのかもしれない。
しかし、今の燿炎の内に平和の存在は感じられなかった。
そして、過去を振り返ってみても、
平和を感じた覚えは一度も無かった。
覚えていないくらい子供の頃には、平和であったのかも
しれないが、それでも、世界の何処かで、子供には
知り得る事の無い紛争が、起こってはいたのであろう。
果たして、この世界に、平和なんてものは、
存在するのだろうか。
燿炎がそんな風に想いを巡らせた、
ちょうどその時に、麗羅が話掛けてくる。
「炮炎と一緒だった時は平和だったわ」
「どう?平和だったんだ?」
燿炎が麗羅に訊いた。
「でも、平和じゃなかったの」
燿炎の質問に対する回答としては不適切に感じたので、
燿炎は黙って、麗羅の次の言葉を待つ。
「だから、戦う事を決めたのよ」
結局、質問に対する納得のいく回答は得られなかった。
しかし、戦う事の意味については、
なんとなくだが、解るような気がした。
再び、麗羅が続けて言う。
「露衣土は己の平和を、
全ての人々に押し付けようとしているの」
燿炎は何も言わずにただ、麗羅の話を聞いている。
「だから、露衣土だけは倒さなければならないのよ」
確かに、麗羅の言う通りだと思った。
そして、燿炎は自分が平和を求め過ぎていた事に気付いた。
反乱軍のリーダーとなり、その責任感もあっての事だろう。
自分達が平和にしなければならない、と。
今までは、平和の為にと戦っていたのだ。
しかし、この戦いはそのようなものではなかったのだ。
平和への希望を繋ぐ為の戦いであったのだ。
  1. 2016/03/07(月) 09:20:22|
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