風を掬う者(先行版)

人間の愚かさ、そして死をテーマにしたオリジナル小説

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弐章/英雄/挿話参拾伍/戦いの後、そして繰り返される歴史

燿炎達、討伐軍の別働隊が露衣土を倒し、露衣土城を
攻め落とすと、湘の国で展開していた露衣土軍の本隊も、
なんなく討伐軍の軍門に下る事になる。
皇帝を失った兵達にはもう、戦う気力も理由も無かった。
そして、氷の大陸の民衆の中には燿炎達を迎え入れる事に
抵抗の強い者も少なからずいたが、それでも、やはり、
戦闘が終わった事による安堵感に包まれている者達が
大半ではあった。
民衆とは現金なもので、今まで露衣土を英雄として
崇めていたのに、その露衣土が倒されると、今度は、
露衣土を倒した燿炎を英雄として崇めるようになる。
民衆にとって英雄は誰であってもよいのだ。
平和に暮らす事が出来れば、それでいいのだ。
そして、その期待を今度は燿炎に
託す事になっただけのことなのだ。
そして、燿炎達、討伐軍は他の三大陸に加え、氷の大陸も
制圧する事になったのだが、露衣土と同様のやり方では、
精霊の星全体をまとめる事は出来ないと考え、
各大陸毎にそれぞれ、統治をしていくようにした。
氷の大陸では他の大陸に比べ、討伐軍のリーダーであった
燿炎に対する反発も強かった事も考慮し、氷の精霊の
守護を受けている凍浬が統治をしていく事となる。
そして、燿炎は故郷を離れ、炎の大陸を統治し、
麗羅が風の大陸を、崩墟が大地の大陸を、と、
それぞれ統治していく事となる。
そして、凍浬が氷の大陸に留まり、燿炎は炎の大陸へ、
麗羅は風の大陸へ、崩墟は大地の大陸へとそれぞれ
自分が統治する大陸へと向かった。
その後、氷の大陸と炎の大陸は国土の広さと地域による
習慣の多様性から幾つかの国家に分割した上での
連合国制を布くようになる。
こうして、精霊の星に束の間の平和が訪れた。
しかし、この平和もそう長くは続かなかった。
三十年程経った後、炎の大陸を統治していた燿炎が
暗殺されてしまったのだ。
精霊の星の民衆は、再び英雄を失う事になり、
徐々に炎の大陸から精霊の星全体へと
混乱が拡がっていく事になる。
そして、精霊の星の民衆は、
再び新たな英雄の登場を待つ事となった。

万象は言った。
『争いによって手に入れた平和は長続きするものじゃない』
と。
正に、その言葉通りになってしまったのだ。
しかし、争わなければ、平和を手にする事は出来ない。
これもまた、現実なのである。
そんな矛盾の中で、これまで人類は歴史を積み重ねて来て、
これからも新たな歴史を作っていく事になるのだろう。

           ☆弐章/英雄☆
                    完
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  1. 2016/03/08(火) 05:59:36|
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弐章/英雄/挿話参拾肆/起死回生

露衣土の魔法に因って、
燿炎は一瞬にして凍らされてしまった。
露衣土は止めを刺すべく大地の魔法で、
凍り付いた燿炎を粉々にしようとした。
しかし、燿炎に変化は無かった。
周りを見渡すと、いつの間にか燿炎のすぐ左後方に崩墟、
上空に麗羅、燿炎から少し離れた右後方に凍浬、と、
討伐軍四天王の残りの三人が此処までやって来ていた。
そして、凍っていた燿炎もすでに解凍され、
元の姿に戻っていた。
麗羅が風の魔法で崩墟と凍浬を此処まで連れて来て、
崩墟が大地の魔法で露衣土の大地の魔法を相殺し、
凍浬が氷の魔法で凍っていた燿炎を解凍したのだ。
「助かったぜ」
目を覚ました燿炎が言った。
そして、燿炎は再び先程と同じくらいの大きさの火球を、
自らの頭上に作り出し、それを露衣土に放った。
露衣土もまた、先程と同様に、
微動だにせず、火球に包まれる。
その瞬間、燿炎が叫ぶ。
「麗羅!」
「判ってるわよ!」
麗羅が応えた。
そして、麗羅が風の魔法を使って風を操り、
露衣土を包んでいる火球に大量の酸素を送り込む。
火球の炎が勢いを増す。
そんな火球の中で露衣土は燿炎に対して、
優しい眼差しを向けながら声を掛ける。
「本当に強くなったものだ」
露衣土がそう言った途端に火球が一気に消し飛んだ。
そして、今度は火球と共に、
露衣土の肉体も跡形も無く消し飛んだ。
「露衣土ー!!」
燿炎の咆哮が露衣土城の上空に響き渡る。
  1. 2016/03/08(火) 05:58:32|
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弐章/英雄/挿話参拾参/万事休す

露衣土の部屋の前で燿炎は露衣土と対峙していた。
珍しく風もまったく吹いていない。
風も二人の対決を固唾を呑んで、静かに見守っている。
正に、そんな感じであった。
そんな中で先に動いたのは燿炎だった。
燿炎は自らの頭上に、とてつもなく大きな火球を作り、
その火球を露衣土へ向けて放つ。
これだけの火球を作り出せるのは、
この星でも燿炎にしか出来ない事だろう。
それでも露衣土は微動だにせず、そのまま火球に包まれた。
普通ならこれで露衣土の体は跡形も無く燃え尽くされ、
勝負は決するはずであった。
しかし、信じられない事に、
その火球の中から、笑い声が響いてくる。
そして、露衣土が言う。
「これくらいの炎で私を倒せるものか」
途端に露衣土を包んでいた火球が一気に消し飛んだ。
露衣土は先程と同じ状態で微動だにせず立っていた。
「くっ、」
燿炎は小さく呻いた。
燿炎にはもう、先程より強力な炎は作り出せない。
燿炎が作り出す事が出来る最大の炎が通用しなかったのだ。
万事休すである。
「どうやら、覚悟が必要なのはお前の方だったようだな」
露衣土が勝ち誇ったように言った。
燿炎は何も言い返せずに、ただ露衣土を睨みつける。
そして、露衣土は畳み掛けるように言う。
「炮炎があの世で寂しがっているぞ。
これから炮炎と再会させてやろう」
露衣土のその言葉と共に、
燿炎は一瞬にして凍らされてしまった。
露衣土からすれば、後は大地の魔法で、
燿炎を粉々にするだけである。
  1. 2016/03/08(火) 05:56:59|
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弐章/英雄/挿話参拾弐/理解を超えた対立

様々な経緯を経て、結果的に、なのかもしれないが、
燿炎は露衣土に対する理解を深める事となった。
だから、燿炎は憎しみを抱いていたはずの露衣土に対して、
尊敬の念すら抱くようになってきていた。
そして、露衣土に対する尊敬の念があるからこそ、
燿炎もまた、真剣に平和へと向かわなければならない。
炮炎も真剣に平和へと向かった過程で、露衣土に
殺されたのであり、露衣土もそんな炮炎だからこそ、
真剣に炮炎を殺したのである。
そして、燿炎と露衣土は、
これから雌雄を決しようとしている。
お互いがお互いの信ずるものの為に、
相手を倒さなければならない。
その結果、恐らくはどちらかが死ぬ事になるであろう。
そして、どちらが死ぬ事になったとしても、
どちらも恨んだり、憎んだりするものではないのだ。
お互いが真剣に平和というものと向き合った結果、
相手を殺さなければならなくなっただけの事である。
二人は数瞬の間、目を合わせたまま微動だにしなかった。
そして、露衣土が先に燿炎に声を掛ける。
「久しぶりだな」
「そうだな。これだけの時間があれば、
お前も十分に覚悟が出来ただろう?」
燿炎は露衣土の声に応えると共にそう切り返した。
「私に一体、何の覚悟の必要があるんだ?」
露衣土も負けずに切り返した。
「まあ、いい。俺達の間に言葉はもう、不要だ」
「そうだな」
二人は再び、目を合わせたまま微動だにしなくなった。
下階では、城兵と討伐軍との激しい戦闘が続いている。
しかし、此処はまるで、
時が止まってしまったかのようである。
  1. 2016/03/08(火) 05:55:24|
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弐章/英雄/挿話参拾壱/憎しみが理解へ変わるまで

久しぶりに露衣土の顔を見ると、燿炎の頭の中で、
炮炎が殺された場面が繰り返された。
いつも、夢で見ていた場面である。
燿炎の中で何とも言えないような感情が、
沸々と湧き上がってくる。
兄の炮炎を失った哀しみ。
その炮炎を殺した露衣土を目前にし、
憎しみが生じてきても当然ではある。
しかし、以前は憎しみもあったが、今のこの感情には、
不思議と憎しみのようなものは、もう無かった。
だから、何とも言えないようなものなのだ。
今、燿炎も露衣土もお互いに対して憎しみを抱いて、
敵対しているわけではなかった。
露衣土は精霊の星を統一する事が平和へと繋がると信じて、
その妨げになる者は炮炎であろうとも、燿炎であろうとも、
他の誰であろうとも排除するだけの事で、その結果として、
炮炎を殺す事になり、燿炎とも敵対する事に
なってしまっただけなのだ。
今の燿炎には、そんな露衣土の姿勢が
十分に理解出来るようになっていた。
勿論、幼馴染みという事もあり、長年共に過ごしてきた、
露衣土の性格は十分に解ってはいた。
しかし、炮炎が殺された時は、露衣土に対して、
憎しみを抱かずにはいられなかった。
その憎しみが露衣土に対しての疑問というものを
決定的なものにし、露衣土の下を離れて、
反乱軍へと身を投ずる最大の要因になった。
そして、反乱軍のリーダーとなり、露衣土軍と
戦っていくうちに、平和というものに対する疑問、
戦う事に対する疑問、様々な疑問と向き合う事となり、
それら多くの疑問が燿炎の内にあった露衣土に対しての
憎しみを洗い流してしまったのかもしれなかった。
そして、何の迷いも無く、いや、迷いはあったとしても、
それを表には出さずに、自分が信じた道を突き進む事が
出来る露衣土に対して尊敬の念すら抱くようになっていた。
露衣土は露衣土で真剣に平和へと向かっていたのだ。
今の燿炎には、それが十分過ぎる程、
理解出来るようになっていた。
  1. 2016/03/08(火) 05:53:58|
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